2010年1月14日木曜日

「みんなのBIM」その答え!

明けましておめでとうございます。

去年の最後のブログでは、「BIMは大企業だけのものでなく、個人の建築家や小規模な設計事務所にも手頃な値段でBIMツールが必要」と書きましたが、そのソリューションについてはあえて触れませんでした。その時点ではいくつかの考えはありましたが、まだ計画、計算そして検討の段階でした。今、その答えが完成しました!




グラフィソフト社が、このバージョンを5年前や5年後ではなく、今発売するのはなぜでしょうか。小規模な設計事務所のための廉価版の発売は1990年代にも検討されていました。一番大きな問題は、低価格版とレギュラー版をどのように区別するか、という点でした。3D機能を外して、低価格の2D作図用のArchiCADを作るという案もありました。しかし、これは「作図する」のではなく、「3Dモデルから図面を生成する」というBIMコンセプトに正対する考えです。私はこの案に反対しました。数々の検討の結果、その時点ではArchiCADの製品の品質を落とすことなく外すことのできる機能がなく、時期尚早という結論に達しました。

その後、2008年には「STAR(T) Edition」(SE)と呼ばれる製品が日本でも発売され始めましたが、販売数は伸びませんでした。この製品は、作図機能を外したこと、レギュラー版へのファイル互換性に欠けること、またバージョンアップが保証されていないことなどが理由により、マーケティングツール以上のものを期待する日本の市場には向かなかったと思います。

しかし、その後完成した「ArchiCAD13 Teamwork 2.0」は生産性を飛躍的に向上するため、ハイエンドであるレギュラー版と低価格版を区別する理想的な機能であると考えました。チームワーク機能がなくてもArchiCADも利用でき、小規模な住宅プロジェクトなどでは必要とされることもありません。しかしながら、大規模物件ではチームワーク機能は非常に大きな効果があります。ゼネコンや大手事務所では、生産性を向上させるこの機能には付加価値があり、投資が無駄になるリスクはありません。

STAR(T) EditionArchiCAD13 Soloの基本的な違いは、Soloがレギュラー版へのアップグレードを視野に入れた「架け橋」を提供するのではなく、主要製品としてSolo用バージョンアップが保証されており、Soloから通常のチームワークバージョン(ArchiCADレギュラー版)への乗換えることなく使い続けることができるように開発されています。ArchiCAD Soloの機能詳細に付いてはここでは触れませんが(詳細はこちら)、ここで強調したいことは、全ての編集、作成機能が揃った「正真正銘」のArchiCADであるということです。更に重要な点は、レギュラー版と100%双方向のファイル互換性があるということです。

このArchiCAD13 Soloを商品化するにあたり、「ブダペスト本社の承諾」、という条件を満たす必要もありました。幸運にも、新しい若くて斬新なグラフィソフト経営陣は、日本においてArchiCADの販売を促進するためには、大規模な組織での成功と利益だけではなく、小規模な設計事務所でも市場拡大を図ることの重要性を十分理解しています。広い範囲に提供できる商品が必要とされているのです。Soloの価格帯はすぐに収入に繋がるものではありませんが、グラフィソフト経営陣はこの戦略を今後のArchiCADビジネスへの投資として理解し承諾しています。

正直に言って、今とても興奮しています。ArchiCADビジネスに携わるようになって以来、この考えを実行したいと考えていました。個人的に、本当のグラフィソフトジャパンの姿はここから始まると考えています。

2009年12月18日金曜日

興奮と困難

今年も終わりに近づき、一年を振り返る時期になりました。今年についての感想を一言で表すと「興奮」と「困難」につきるかと思います。

「興奮」の理由として、一年前には東京にまた戻るとは夢にも思っていなかったことがあります。ですから再就任する話が今年3月に出てからは本当に興奮する毎日でした。まず最初に、そもそも日本に来るか(実際来ました)、次に、この仕事をする器量がまだあるか(あると願っています)、また、滞在が短期間か長期間になるのか(結局は長期間になりました)検討する必要がありました。また、グラフィソフトジャパンにとっても興奮する年となり(理由の一部は私にあると思いますが)、今年は沢山の成功も続きました。日建設計と鹿島は大規模案件でBIMによるデータ連携の実用に向けた試行を始めた、清水建設の迅速なBIM導入、Build Live Tokyoでの二つの最優秀賞の受賞(最初に前田建設のスカンクワークス、次に清水建設のストリームチーム)、そして数々の受賞をしたアールテクニックのシェルハウス、と数々あります。

同時に、今年は「困難」な年でもりました。明らかに、経済危機は弊社にも影響を与えています。BIMを始めたいと願っている建築家も、価格の面でリース契約が取れないため導入できない、という残念な状況も目にしました。前回のブログにも書いたように、BIMは大中企業(ゼネコン、組織設計事務所)には比較的迅速に普及しますが、アトリエ事務所など小規模事務所でもBIMを導入できるようなソリューションが必要とされているのです。

これから先は何があるしょうか?さらに多くの困難、興奮が待ち構えていると思います。経済は回復してきてはいますが、リーマンショック前の状況まで回復するにはさらに時間がかかるでしょう。投資はまだ厳しい状態が続き、経費も最小化されるでしょう。しかし、国内外での競争が激しくなる中、日本企業にとってIT化に遅れをとらないことが重要となります。ここ数年、BIMがようやく建築業界で実践されつつあります。そして、今後3から5年の間にBIMが本格化することが予想されます。今、BIMを導入すれば、後から必要に迫られて導入する企業に比べて有位に立つことができるでしょう。日本の設計会社がこの明快な事実を見逃さず、他に遅れをとらないことを切に願います。

それでも、日本におけるBIMの未来に関して、個人的には今までにないほど楽観的です。日本の伝統的な侍魂は、困難な状況でも常に最善を尽くすことができ、日本の建設業界もこの危機からさらに強力になって脱出する可能性が十分あると思います。そして興奮を感じる理由でもありますが、弊社がその奮闘を支援できると信じております。

これが今年最後のブログ投稿となると思いますが、ここで弊社のBIMソリューションを信頼してご利用いただいている方々にお礼を申し上げたいと思います。また、様々な場面で支援してくださっている方々、ビジネスパートナー、サポーター、そして東京、大阪、ブダペスト、世界各国のグラフィソフト社員にも感謝しています。

メリークリスマス、そして良いお年を!

(2010年に続く)

2009年12月10日木曜日

みんなのBIM

このところBIM熱が高まっていますが、ほとんどのBIMユーザーが大手事務所であり、真っ先に上げられるのは大手ゼネコンです。Build Live Tokyoの上位者はゼネコンだけでしたが、もちろん各チームの参加人数を考えれば当然とも言えます。全ての設計行程を請け負うゼネコンがBIMからの利益を最も得ることができるとはいえ、BIMは本当にゼネコンのためだけのツールなのでしょうか?

実際には、設計全体を請け負わない事務所にもBIMは大きな利益をもたらすはずです。結局のところ建築家は整合性のとれた設計図書の作成が求められ、できなければ次の仕事の依頼はこないでしょう。「ビルディングモデル」が建築家の頭の中だけで存在するなら、設計図書の整合性はとれません。セントラルビルディングモデルを利用して設計図書を作成する方が簡単なことは間違いありません。3Dデータ作成が手間のかかる仕事だったとしても、その結果は確かに努力に値するのです。ではどうして中小規模の設計事務所はBIMの導入に遅れをとっているのでしょうか。

一つの理由は、まだ最新の情報が伝わっていないということです。もし伝わっていたとしても、誤った情報が伝わっているかもしれません。実際「別の3DモデルでもBIMと同じことができる」という意見をしばしば耳にしますが、多くの建築家はまだプレゼン用モデルとBIMモデルの違いを理解していないことが分かります。結局のところ、設計図書がビルディングモデルと連動していなければ整合性を図る事はできないのです。

また一方で多くの建築家はBIMのコンセプトを理解していながら、それでも2Dを使っています。この場合、考えられる理由は価格です。BIMソフトは安くありませんし、ArchiCADも例外ではありません。高価であるのは、高度な機能を開発するための膨大な労働(弊社の場合20年以上)が反映されているからです。とはいえ、弊社は大企業との大きな取引だけで満足するつもりはありません。中小企業も整合性のとれた設計図書とビルディングモデルの利益の恩恵を受けられるべきだと確信しています。

現時点のこの問題は必ず解決します。それが来年の日本での私たちのゴールだからです。

2009年11月26日木曜日

おめでとうございます!

お客様の成功について耳にするのはいつでも嬉しいものです。1つには、知っている人が成功しているのを見る事が嬉しいということもありますし、もう1つには、ささやかな願いとして弊社製品がこの成功に少しでも貢献できればと願っている(実際、そうであると信じている)からです。ですから、ダイナースクラブのテレビコマーシャルでアールテクニック社のデザインによる「シェル」が映っていた、と社員から聞いたときはとても嬉しく感じました(実際のコマーシャルはこちらから 動画の最初の16あたりで数秒映ります)。
この素晴らしい建物が初めて評価されたわけでもなく(2009年度の「グッドデザイン賞」や「モダンリビング大賞」を受賞)、コマーシャルで建物が映ることが建築家にとって最高の結果と言うわけではありませんが、間違いなく一般の知名度が高い事を意味し、プロフェッショナルとしての光栄に感じる以上のものがある事でしょう。興味深い点として、アールテクニック社はこの複雑な建物全体をArchiCAD3Dモデル作成しただけでなく、設計図書を含む全ての建物資料をモデルから生成したという点です。これもまた、BIMは大規模物件だけでなく、住宅設計においても十分活用できるソリューションである、という事の証明になります。

この建物についての詳細はアールテクニック社のホームページ(http://www.artechnic.jp/
Residential」をクリック)からご確認ください。また、以下のページからもご覧いただけます。

「グッドデザイン賞」

http://www.g-mark.org/award/detail.html?id=35442

「モダンリビング大賞

http://mdnlvng.exblog.jp/12768662/

「米インテリアデザイン誌最優秀賞

http://www.interiordesign.net/info/CA6706220.html


井手さん、おめでとうございます!

2009年11月10日火曜日

BIMの天秤

なぜ3Dなのか?楽しいから、でしょうか?確かに、3Dモデルの作成は楽しい作業でもあります。しかし、単に「楽しい」というだけの理由で3Dを利用している場合、建築設計者としてではなく、他の設計者や映画作成などCG製作が合っているでしょう(おそらくこのブログの読者ではない)。完成した3Dモデルを眺めるのは楽しいかもしれませんが、実際に3Dモデルを作成する作業はできるだけ簡単にしたいと思われていることでしょう。率直に言うと、設計者の多くは3Dモデル作成が面倒くさく、つまらない仕事と考えています。それでも3Dモデルを作成する理由は、3DモデルはBIMモデルとなり、BIMモデルは整合性の取れた設計図書、仕上げ表、数量、環境分析などに利用できるからです(ここではArchiCADの宣伝はやめておきましょう)。

この二つの側面、BIMモデルを作成する努力とその成果としての利益がバランス良く保たれないと、努力と利益が釣り合わないと感じ、結局、使い慣れている2D手法から抜け出せない事になります。これは「天秤」に似ていると言えます。努力と利益のバランスが取れている、または利益の側が重い事が望ましいのです。

もちろん、弊社は現状に満足することなく、ArchiCAD、そして「BIM天秤」のバランスをさらに向上させるよう開発を行っています。開発にあたっては、BIMモデルの作成を簡単にすることに多くの努力が注がれています(実際、要望の多くはこの分野です)。つまり片方の天秤皿(努力)から重りを減らすことです。しかし、バランスを改善するには他にも方法があります。それは右の天秤皿にもっと重りを足すことです!つまり、BIMモデルの利益を増やすことです。1990年代を思い出してみると、天秤のバランスは適切ではなかったと思います。整合性の取れた設計図書という利益はありましたが、モデルを作る努力が大きすぎました。BIM(当時は「バーチャルビルディング」と呼んでいた)は弊社製品の将来性を期待した数少ない先駆者の「ハイテクな趣味」でしかなかったのかもしれません。その後、BIMモデル作成をより簡単により速くするための改善に沢山の努力が費やされ、天秤のバランスも良くなってきたと言えます。

それでは、ArchiCAD 13の発表によりBIM天秤のバランスがどのように変わったのでしょうか。

  • ArchiCAD 13の改善項目は、左の天秤皿から重りを減らす効果があります。「チームワーク2」は、BIMモデル作成を効率的にする大きな改善となり、64ビット対応は作業負荷を大幅に削減します。
  • MEP Modellerは、設備データの作成を可能にし簡単に行えるだけではなく(左の天秤皿が軽くなる)、同時に分析ツールとしても機能します。また、干渉チェック機能を使えば建築/設備モデルを統合した利益が増えることになります(右の天秤皿が重くなる)。
  • ECO Designerは、一般的な分析ツールです。多少の追加入力を行うだけで、すぐにその利益を実感できます。右の天秤皿がさらに重くなります。
  • 新しいVBEも、明らかに利益の側にあり、BIMモデルを視覚的に確認できるようになります。今回の新しいVBEでは高価なビデオカードが必要なくなり、より多くのユーザーが利用できるようになります。

左の天秤皿から重りを減らす作業は主に弊社開発グループの仕事になりますが、右の天秤皿に重り足すことはパートナーの強力も借りています。協力会社が新しい分析ツールを開発することで利益の増大を助けていただいています。BIMデータを活用する例として、空気循環分析(「Flow Designer」や「WindPerfect」)、日影計算や天空率(「ADS」や再発売予定の「MicroShadow for ArchiCAD」)、ファシリティマネジメント(ArchiCADベースの「ArchiFM」が日本での発売を検討中)などが挙げられます。これはまさに「チームワーク」です。より多くの人が同じ作業を行うことにより、より早く完成するのです。

お分かりいただけたと思いますが、右側の天秤皿では様々なことが起きています。まだBIMモデル作成は難しいと感じておられるのであれば、BIMモデルを本当に十分活用しているか考える必要があるのかもしれません。

2009年10月26日月曜日

グラフィソフトの暦

私の経験では、ソフトウェア会社の人間は年を数えるのに「1年」という単位ではなく、その時リリースされたソフトウェアの「バージョン」で考えているようです。 例えばグラフィソフト社でも、以前の話をする時は「あれは1997年頃だった」と言う代わりに、「あれはバージョン6.5の時だ」とか、「あれはArchiCAD 10より前のことだ」というように使います。新しいバージョンは、新しい年、新しい製品、新しい始まりを意味するのです。ですから新製品発売日はまるで元旦のようなものなのです。ブダペストの本社では新しいバージョンの出荷ごとにシャンペンを開けて祝ったものです。今年は弊社にとって非常に躍動的な年になりそうです。まさに21世紀のアプリケーションとして、スピード、信頼性、共同作業の簡易さなど全ての面において改善されたArchiCADの始まる年だからです。

新年が世界同時に始まらないように、「バージョン年」も国によって違う日に始まります。日本における「13年」は今日始まります。すでにユーザーの方、まだこれからというユーザーの方、全ての方にとって良い「ArchiCAD 13年」となりますように。

2009年10月13日火曜日

Build Live Tokyoが終わって感じたこと

本当に興奮する結果でした!3つのプロジェクト、3つのプレゼン、意見の分かれる審査員。しかし、選ばれるベストプロジェクト賞は一組です。個人的にも納得でしたが、審査員はテクノロジーとデザインのバランスが一番とれていたプロジェクトを選択しました。ただ、他のどのチームが「ベストプロジェクト賞」に選ばれたとしてもおかしくはなかったでしょう。最終審査に残ったどのチームも完成度の高いBIM利用とデザイン性を表現していたと思います。

もちろん改善できる面もいろいろあります。例えば、もっと沢山の参加者(建築設計事務所の参加がなかった)がいればイベントとしてもさらに盛り上がったと思います それには少し軽めの形のコンペが必要でしょう(少なくとも前後含め48時間を超えないようなもの)。また、イベントは一年に一回で十分かもしれません。いずれにせよ、重要なのは、再びBIMが大きく前進したということです。大規模な企業もBIMを日常的に使い始め、結果として生産性の向上が証明されたのです。

ArchiCADユーザーによる今回の結果は、弊社製品に対する関心の高まりが単なる偶然ではない事を再度証明しました。最終選考に残った3つのチームの内の2チームArchiCADを使用しており、他の2つの賞を受賞したArchiCADユーザーについても同様に誇りに感じています。BIMテクノロジー賞はスカンクワークスとすとりーむが受賞し、環境設計賞はチーム48が受賞したのです。また、弊社のOEM製品であるRIKCADがファイナリストチームにより活用されていることも嬉しく感じました。今回BLTでは建物と環境の間のより密接な関係に重点が置かれていました。建物内だけに限らず周辺環境を配慮したデザインを考える建築家にとって、RIKCADは非常に重要なツールとなるでしょう。

もう一つ興味深い点は、構造モデリング用ツールとして、スカンクワークスでは実績のあるTekla Structuresを使用しているのに対し、すとりーむはRevit Structureを使用していたことです。これはArchiCADがオープンプラットフォームであることを証明しています。この全ては弊社の方向性が正しいこと、そしてArchiCADの成功はユーザーの成功によってのみ精確に測られると言う事を示しています。

最後に、今回の受賞者の皆様、そしてこの素晴らしいイベントに参加された皆様に心よりお祝い申し上げます。