2018年5月30日水曜日

10年間の混乱を経て

新しく、革新的な技術というものは通常スムーズに受け入れられないものです。自動車が登場した時、それは馬車の運転手や所有者にとってよいニュースではなかったでしょう(すぐに自動車を購入して運転方法を身につければ別ですが)。PCでのDTP(デスクトップパブリッシング)の登場は、印刷業界においてかなりの混乱と激動の原因となって、新しい企業が生まれ、そしていくつかの企業は廃業を余儀なくされました。インターネット上にはさまざまな新しいメディアのwebサイトが現れ、紙媒体の新聞市場を脅かしており、既存のメディアもネットでのサービスを提供する必要に迫られたり、あるいは市場から撤退するものもあります。「破壊的技術*」という言葉があります。これはそれまでの技術と根本的に違う新しいものが導入される際には、困難や痛みを伴うという意味で使われます。

約10年前、BIMの概念が日本で急速に普及し始めた当初は、BIMの導入によって、建設産業における困難が、努力を必要とせずに解決されるようになるという淡い期待がありました。現在では、この「無垢」な段階は過去のものとなり、BIMのように既存の価値観を打ち砕く「破壊的技術」が最初にもたらすものは、混乱だとわかってきました。BIMは、コンピュータや2D CADシステムのように、それまで行っていた作業をテクノロジーによって高速化する技術とは違い、ワークフロー自体にはるかに大きな変化を与えます。従って、BIMは新しいワークフローを必要とし、この変化は組織にとってしばしば苦痛をともなうものになります。役割と責任の再編を意味する場合は特にそうです。これが当初想定されていたよりも、BIMの導入ペースが長期化するように思われる理由です。

一方で、これらの大きな変化を乗り越えることができた企業は、すでに優れたサービスを提供し、より高い収益性を達成することで、利益を享受し競争の優位を獲得しています。BIMの導入に成功した企業は、次のようないくつかの共通点があるようです。


  • 「BIMはソフトウェアではなくプロセスである」というマントラを深く理解しており、新たなワークフローを開発し、OPEN BIMコンセプトを完全に受け入れることに積極的である。


  • (一部上の項目と重なりますが)OPEN BIMのコンセプトを完全に取り入れて、BIMが単一製品でのプロセスではないと理解している。


  • "混乱期"を切り抜ける強いリーダシップをもっており、社内で一時的に不評を買う、あるいは一部のグループと利益が反する決定をすることを恐れない。


当社においては、私たちの仕事は単にBIMソフトウェアを販売するだけではないと常に信じてきました。成功するためには「ナレッジベンダー」になり、お客様が独自のノウハウを作成することをお手伝いする必要があります。私は、これが今後10年間、日本におけるBIMの発展を導き続ける哲学であると確信しています。

* 1995年にClayton M. Christensen(有名な「Innovator's Dilemma」の著者)が作成した言葉。「破壊的革新」とも呼ばれる。

2017年12月19日火曜日

羽根を集める

世の中には、切手を収集する人や、ビンテージバイク、有名ブランドの時計をコレクションする人がいます。 GRAPHISOFTでは「羽根」を集めます。



初めての「羽根」は勤続10年が経った時にもらえます。その次は15年。5年ごとに1つもらえます。「羽根」の受賞式は、近年クリスマスパーティで行われるようになりました。ここ数年でブダペストのチームだけではなく、世界各国のGRAPHISOFTオフィスの対象者が招待されることが慣習となりました。もちろん渡航費用は会社負担です。つまり、時間が経てばすべての従業員は5年ごとに本社を訪れるチャンスがあるということです。

今年は3名のグラフィソフトジャパンメンバー(に加えて年間「MVP」を受賞したメンバーも)がクリスマスパーティに参加したことを非常に誇りに思います!すべてのGRAPHISOFTグループ会社(ハンガリー本社を除く)でもトップの参加者数でした!

今回のパーティは空想的で非現実的な雰囲気でした。最近は毎年「テーマ」があり、今年のテーマは「不思議の国のアリス」でした。パーティはブダペストで人気の大規模なイベントスペース「Millenáris」で開催されました。今回はパーティのために会場名を「GRAPHISOFT Wonderland」に改称されて、装飾されていました。
会場はいくつかのエリアに分かれており、「赤の女王の城」や、「白の女王の大広間」、「マッドハッターのお茶会」、さらに「白うさぎのコンサートホール(ちなみにここは後にカラオケ会場になりました)」。会場の中央では巨大なチェステーブルがステージになっていました。参加者は400名以上!テーマに合うように「黒、白、赤」でドレスアップすることになっていました。皆本当に華やかでした!








パーティーの合間でCEOのViktor Varkonyiと、創業者であり現在チェアマンでもあるGabor Bojarがマイクを持って、「羽根」を一人一人に手渡しました。今年は30名以上の受賞者がいましたのでしばらく時間がかかりましたが、すべての人が称賛の言葉をかけられ、私たちのリーダーと握手や記念撮影をしました。勤続10年の方が一番多いかなと思われていましたが、実際には15年、20年、さらには25年の方もいました!そして最後に、Gabor Bojarがステージから降りた後、彼の名前が呼ばれました。確かに、彼は35年前にGRAPHISOFTに「入社」しました(創業した時です)ので、「羽根」を受け取る権利があります。ですよね?

グラフィソフトジャパンの新川(陳)は勤続20年で表彰されました

ところで、なぜ「羽根」なのでしょうか?「羽根」(元々は虹色でした)は、GRAPHISOFTの最初のロゴでした。1980年代のころです。それは当時のAppleのロゴを参考にしている一方で、「羽根」は技能や作図を象徴していました(私たちがまだBIMの哲学に完全に取り組む前です)。その後、ロゴとしての「羽根」はなくなりましたが、今も大切な従業員に敬意を表する形として残っています。


もしかすると、「これは素晴らしい慣習であるかもしれないが、顧客には関係のないことだ」と思われるかもしれません。しかし、私はこう思います。

まず、企業文化はその姿を社外に投影するものです。会社が従業員である彼もしくは彼女を大事にしていなければ、どうして従業員に顧客を大事にしてもらうことを期待できるでしょうか?私は、幸せな従業員がいる企業こそが、長期的に顧客を満足させる製品を作ることができると強く信じています。一方で、技術的な面でも理由があります。何百万行ものコードを持つARCHICAD(または他のBIMソフトウェア)のような複雑なソフトウェアを開発する場合、ソフトウェアのその部分のコードを書いた人が会社を去ると、どのように注意深く文書化しているかに関わらず、その他の人たちはその部分に触れるのを嫌います。そうすると、それは簡単に(バグを引き起こす)何かしらの混乱につながります。これが古参の開発者の役割が非常に重要である理由です。過去と未来をつなぐ役割であり、完璧さを求められる今後の機能開発の可能性の象徴なのです。このような従業員がたくさんいるという事実は、ソフトウェア業界でしばしば発生する、とても苦しい「新鮮なスタート(機能の喪失および互換性のないデータを伴うものです)」を回避し、継続してソフトウェアのあらゆる部分を改善していくことを可能にします。ますます価値のあるBIMデータが作成されるにつれて、このような継続性が重要になってきています。ソフトウェアのコードが複雑になってきたという理由でコードをリセットすることにより、そのソフトウェアで作成されたBIMデータが10年後に使えなくなってしまうことを、お客様は望まないでしょう。私たちGRAPHISOFTは創業から30年以上が経ちました。今後も多くの「羽根」を手渡していけることを期待しています。

グラフィソフトジャパンにおいては、いろんな出来事があったこの一年を成功裏に終えようとしています。同僚、パートナーの皆様、そして大切なお客様に感謝いたします。弊社、そして弊社製品、技術を信頼いただき、今年もエキサイティングな分野で働くことができました。

メリークリスマス、そして幸せな新年をお祈りします!

よいお年を!

2016年12月26日月曜日

私のこの秋のニュース、トップ3

しばらくブログの更新が滞っていましたが…、これは注目すべきことがなかったからではありません。むしろ、ご報告が追い付かないほど、いろいろなことがありました。年末になり、ランキングが発表される季節になりました。Man of the Year、Best of 2016など…。ですので私もこの秋に起こったことから、お気に入りのニュースを3つご紹介したいと思います。

1.シンガポールでのブレークスルー


これまで数回述べていますが、アジアにおいてARCHICADの普及を拡大するためには、シンガポールで強い存在感を示すことが大切だと思っています。シンガポールはASEAN諸国の「経済的な首都」だからです。2012年にオフィスを開設してから、強いチームづくりと、弊社製品をご愛顧いただけるお客様の数の増加に努めてきました。しかしいつも苦しい戦いを強いられてきており、「来るのが少し遅かったかな」と感じていました。シンガポールでは私たちは「標準の」BIMソフトウェアとして認識されていなかったからです。しかし状況は変わりました。BCA(Building & Construction Authority:シンガポールにおける国土交通省のような組織)が、ARCHICADの.plnファイルフォーマット(ならびにBIMx、「軽い」BIMデータ成果物と言われています)を建築確認申請の提出物として認可しました。シンガポールでは5,000㎡を超える建築物はBIMデータによる申請が必須となっています。これは私たちにとって、大きな一歩となりました。建築家はソフトウェアの選択肢が増え、彼ら自身のメリットのためにBIMアプリケーションを選ぶことができるようになったのです。これは私たちの活動を大きく後押ししてくれます!

ニュースリリース(英語)

2.Google Cardboard


私のことをご存知の方であれば、私がBIMxの大ファンだということもご存知かと思います。これは2011年、原点となるコンセプトが日本で考案されたことで「わが子」のような気持ちがあるのと同時に、この技術に大きな可能性を感じているからです。今年は、継続して提供している改善に加えて、2つの大きな変化がありました。1つ目は、無料版で2Dの機能が利用可能になったことです。BIMxの素晴らしい点は、3Dをきれいに速く見られることだけではありません(他のアプリでもこれは可能ですね)。2Dと3Dを組み合わせて利用できることや、プロパティ情報、ハイパーリンクなどの機能が、BIMxのデータがコンパクトなBIMデータといわれる理由です。現在、この機能は無料版(PRO版よりも多くの方にご利用いただいています)でもご利用になれます。これは簡単に使える、コンパクトなBIMビューワーがどなたでもご使用になれるということです!
2つ目は最近のことです。数週間前、 私たちはBIMxでのGoogle Cardboard機能の実装を発表しました。これによりVRでのウォークスルーが可能になり、これまで100万円以上したようなハードウェア/ソフトウェアシステムでしか体験できなかったことが、安価(1,500円ほど)に利用できるようになったのです。この2つの機能で、専門家以外の人にとってもBIMが身近に利用できる素晴らしいものとなりました。

ニュースリリース

3.会社紹介ビデオ


さて、これは楽しいことです。でも年末ですし、楽しい方がいいですよね?今年の初めに、GRAPHISOFT Italyは、彼らのオフィスやスタッフ、企業理念などを紹介する素敵な「イメージビデオ」を公開しました。こちらがそのビデオです。

GRAPHISOFT Italy 会社紹介ビデオ

これを、私たちも作ることはできないかと考え、本社で働く日本人、現在映像の学校で学んでいるHana Yamazakiに日本へ来てもらい、撮影を行いました。イタリア事務所のように美しいらせん階段はありませんが、私たちが持っているBIM、GRAPHISOFT、そして日本のお客様への使命を表現するためにベストを尽くしました。お気に召していただければ幸いです。お楽しみください!

グラフィソフトジャパン 会社紹介ビデオ

最後に、大きな成功の年となった2016年、グラフィソフトジャパンを信頼していただき、弊社製品をご愛顧いただいたお客様とパートナー様にお礼を申し上げます。2017年も、最高のBIM製品やサービスをご提供できるよう最善の努力を続けてまいります。

よいお年を! Happy New Year! Boldog Új Esztendőt!







2016年8月22日月曜日

ARCHICAD 20 - ソフトよりも大切なもの

いよいよARCHICAD 20のリリースです。皆さんは私が、その内容がいかに素晴らしいかを書くものと思われているのではないでしょうか。もちろん、バージョン20は非常に良いアップグレードとなりました。ここ数年で一番良いと言っても過言ではないでしょう。ただ、今回は違う話を書きます。それは、いかにARCHICADが優れていても(これから更に進化していくにしても)、ソフトそのものだけでは使う人の仕事のやり方を変えるまでには至らない、それには他に重要なファクターが存在する…と言うことです。

先日シンガポールに行った時、私は他のBIMソフトからARCHICADに乗り換えようとしている大手のデザイン事務所に対してのプレゼンテーションに参加していました。幹部の一人(実はトップの方でした)は、ほぼずっと静かに座っていらしたのですが、最後に一つ興味深い発言をされました。「我々が●●●からARCHICADに乗り換えようとしている最大の理由は、GRAPHISOFTから受けられる上質なサポートにあるのです。」機能、性能、操作性、連携など私たちが普段アピールしている点には全く触れず、サポートのこと「だけ」を話したのです。

その時から私は「一体GRAPHISOFTのビジネスとは何なのだろう?」と考え続けています。私たちは何を売っているのか? すぐに「BIMソフトウェア」と言う答えは出るものの、それだけではない…実は私たちは「新しい仕事のやり方」を提供しているのではないか、そしてARCHICADはその新しいワークフローの一部に過ぎないのではないか、との思いが段々と強くなってきました。もちろん、ソフトそのものは関係ないと言っている訳ではありません。優れた性能と操作性を持ったOPEN BIMソフトであることは必須条件であり、その部分はブダペスト本社で働く我々の同僚が担ってくれています。大事なのは、ARCHICADをベースにした新しいワークフローを用いることによって、顧客の仕事を効率化し業績を上げることが出来るのかと言うことです。そうでなければARCHICADは「豪華な夕食のために山海の珍味を集めたのですが、レシピがないので調理できません。それでは!」そんな風に例えられてしまうかもしれません。

マニュアルを読めばモデリングツールの使い方やレイヤーセットの作り方、IFCファイルの保存方法などはすぐに理解できます。でも、それだけでは十分ではないのです。そもそも何をモデリングする(しない)べきなのか、どんな種類のレイヤーセットを作るべきか、どのように確認申請の図面を作成するのか、ARCHICADと普段使っているMEPアプリをIFCでどのように接続するのか、なども知っておかなければなりません。このような高度な知識(いわゆる「ノウハウ」)が前述の「調理のためのレシピ」となって、本当の意味でARCHICADのパワーを活用することが可能になり、ひいては仕事のやり方までを変えていきます。

しかしながら、もし私たちがこの「ノウハウ」をユーザーが作ってくれる物だと期待していたら、ベンダーとしてきちんと仕事をしているとはいえないでしょう。これが、グラフィソフトジャパンで最大の部署は営業ではなくBIMインプリメンテーショングループ (BIMi) であると言う理由です。BIMiの社員は、ソフトウェアそのものに勝るとも劣らないほど重要なこの「ノウハウ」を培い、継続的に進化させていく業務を担当しています。具体的には、ユーザー自身でARCHICADが使えるようになるよう手取り足取り教える「JUMP!」トレーニングや、「How to use ARCHICAD」ブログ、GRAPHISOFTヘルプセンター、そしてもちろん莫大な時間のユーザーサポートなどで実現しています。 また、GRAPHISOFT Registered Consultants (GRC) の方々が本を書いたりトレーニングを開催したりすることによって、効率化の解決策を模索しているユーザーの手助けをしていることも忘れてはなりません。

ソフトウェアとノウハウ、両方の要素が揃わない限り、将来性はあるが違和感のある良く知らない物のために、以前から使い慣れた2Dワークフローを捨てることは出来ないと思います。ノウハウを年々積み重ねていくことは、ソフトを改良していくことそのものより、とても重要なことです。私たちグラフィソフトジャパンでは、新しいテクノロジーには飛びつかず世の中の主流になってから取り込むタイプの方々にもARCHICAD 20でBIMをスムーズに導入していただけるよう、さまざまな取り組みをしてきました。ARCHICAD 20は年齢が20歳になっただけではなく、内容とノウハウでも成熟期を迎えました。―いよいよ「成人」になる準備が出来た訳です!



2016年8月3日水曜日

BIMx の新時代が始まる

BIMx PROが発売されてもうすぐ3年になります。(前はBIMx Docsと言う名前でした)良い機会なので、現状について書きたいと思います。App Store‎とGoogle Playのランキングでは、BIMxとBIMx PROは全てのデザイン・建築部門の中で ダウンロード数・人気共に常に上位に入っています。



App StoreとGoogle Playの両方でBIMxは人気のアプリです

発売以来、BIMx PROには継続的に新機能が加えられ、単なる2D/3Dビューアー以上のアプリとなりました。現在ではBIMcloudサーバーに接続が可能になり、ユーザーはBIMデータを閲覧したり中を自由に見て周れるだけではなく、注釈付きのチームワークメッセージをスクリーンショットや写真を添付して送れるようになり、BIMx PROを効果的なコミュニケーションツールとして使用できるようになりました。今やBIMx PROはBIMバリューサークルの第3の柱として、ARCHICADワークフローに欠かせないものとなっています。



これはもちろん初めての試みではないのですが、今後はBIMx PROにだけ新機能を加えるのではなく、無料のBIMxもより進化していくべきではないかと感じていました。そして昨日より、今まではPROバージョンにしか入っていなかった2Dビューアーが 無料のBIMxにも 加えられました。
これにより、多くのユーザーの「ビューアーは無料で制限なく誰でもアクセス出来るもの」と言う希望を叶える事が出来ました。

個人的に思うのは「BIMの民主化」(2年前のポスト)を実現するための、これはとても重要な1歩になるのではないか、と言うことです。限られた建築のプロだけでなく、より多くの人がBIMデータにアクセス出来るようになる、と言うことです。BIMデータが多くの人に必要とされること、すなわち、建設会社だけではなくその先のお客様、ビルのオーナーやテナントまでもがBIMデータを必要とすることでBIMの新しい時代が始まると確信しています。

真の革命が始まろうとしています!

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2015年12月17日木曜日

Why ARCHICAD Loves Rhino?

BIMはいつもハイエンドのデザイン事務所から、柔軟性がなさすぎる、芸術的な自由を制限するものだ、などとして苦い顔をされてきました。結果として、これらの事務所は既に洗練され、確立されたこれまでの業務プロセスにこだわることとなり、Rhinocerosのような自由なデザインを可能とする3Dモデラーを使いつつ、ドキュメンテーションは完全に2Dで行っています(時に3Dモデルを使用することはありますが)。この方法では、設計の自由度が最大限に広がる一方で、BIMがもたらす利益を得る機会は失われ、かつ彼らが非常に必要としているであろう建築物全体の統合された情報の管理や、数量やその他の情報をBIMモデルから取り出せる可能性、またドキュメンテーションの半自動化などのメリットも得ることができません。

この問題を解決するために明確なことは、このような設計事務所の要望に沿うように、BIMソフトウェアをもっと柔軟なものにすることです。しかし、言うのは簡単ですが、実際に行うのは容易ではありません。Rhinocerosの開発元であるMcNeel社のように一つのことに集中している会社(今回の場合は3Dモデリングです)は常に、私たちのような3D、2Dやさまざまなプロパティなどに同時に気を配らなければならないBIMベンダーよりもよい仕事をします。ですので、各企業はそれぞれが一番得意とする分野で力を発揮するのが論理的です。GRAPHISOFTにおいては、NURBSをBIMモデルへ正確に変換し2D、3Dで適切に表現することに着目していく必要がありますが、複雑な形状の編集においてはRhinoが主要なアプリケーションである方がよいと考えています。もちろんARCHICADでのモデリングを今後改善していかないということではありません。ただ、専門性の高い、軽いアプリケーションは特定の分野においてはBIMオーサリングツールよりも優れている、という認識をもっています。ARCHICADがフル装備のトレッカーだとしたらRhinoはトレイルランナーのようなものです。トレイルランナーはより速く移動することができますが、トレッカーはトレイルランナーではたどり着けない場所へも行くことができます。ARCHICADは大量のメタデータを持つ、非常に大きく複雑なモデルも管理することができ、これは単なる3Dモデルではできないことです。




しかし、RhinoのデータをARCHICADにスムーズに変換できるだけでは十分ではありません。例えばスタジアムの屋根のような複雑な部分のみをRhinoで作業し、スタジアムの残りの部分のような、そこまで困難ではない部分はARCHICADで直接モデリングするというのは一般的な方法です。このようなケースでは屋根のデザイナーは設計をするために建物の他の部分を知る必要があります。Rhinoの中のARCHICADモデルがそうです。これを実現するには、互いの情報が行き来できる必要があり、2つのソフトウェアの洗練された参照機能をベースとしたワークフローを実現していく必要があります。ですので、Rhino-ARCHICADのワークフローは単純な「サインオフ」の方法(図1)ではなく、実際のデザイン作業中に並行して使用されるもの(図2)となっています。




そして、多くの人がRhinoを使用する主な理由となっているのがGrasshopperです。ご存知ではない方のために説明すると、GrasshopperはRhinoのコントロールパネルのようなもので、グラフィックインターフェイスを使用して簡単にパラメトリックなスクリプトを作成することができるものです。結果として、パラメータ主導のデザイン(しばしばアルゴリズミック、またはジェネラティブデザインと呼ばれます)を行うことができ、その特性として一方向ではなく双方向にやり取りし、かつ徐々に形を作っていくことができます。私たちは、この機能をARCHICADにも取り入れて、アルゴリズミックな編集の効果が瞬時にARCHICADで反映されるようにしたいと考えていました。これはもう単なるデータのエクスポートではなく、3つのアプリケーションによる真の連携と言えるでしょう。なかなか言葉での説明では伝わらないかと思いますので、一目でわかるビデオをご紹介します。GrasshopperがRhinoをコントロールするのと同じように、ARCHICADをコントロールする方法を説明しています。




実際には、Grasshopperコネクションの重要性はRhinoユーザー向けにとどまるものではありません。ほとんどの建築家がNURBSや有機的な形状を使用して設計することを夢見ているからです。実際にはほとんどの建築物の場合はこのような洗練された設計を実現する予算がなく、ARCHICAD単体でも簡単にモデリングすることができます。しかしこれらの建築物であっても、迅速にさまざまなデザインの選択肢を検討できること(例えばファサードのデザインなど)や、平面図の最適化、細部のデザインなどでGrasshopperのアルゴリズムデザインを活用して、作業を効率化することができます。この場合、Rhinoはデータの輸送者であり(スクリーンに表示する必要はなく、バックグラウンドで起動させておけばよいため)、ユーザーはGrasshopperから直接ARCHICADを操作する感覚で使用できます(図3)。


実はRhino-Grasshopper-ARCHICADコネクションのコンセプトは日建設計様とのパートナーシップの成果の一つです。このプロジェクトの推進を後押ししてくださったことを本当に感謝しております。お約束しました通り、パートナーシップで得られた成果をすべてのユーザーの皆様にも共有いたします。パブリックベータ版はすでにリリースされていますが(英語のみとなりますが、こちらからアクセスできます)、来年の前半には正式版をリリース予定です。もちろん日本語版もです!しかし開発はまだまだ続けていきます。さらなる改善を続けますので、弊社ブダペストのチームにご期待ください。

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クリスマスと新年が近づいてきました。東京の街も綺麗にライトアップされています。昨日東京ミッドタウンを訪れた際、このショートビデオを撮りました。 このビデオとともに、すべてのお客様、パートナーの皆様、そしてこのブログをご覧になっている皆様に、メリークリスマスをお祈りします! そしてよいお年をお迎えください!


2015年8月20日木曜日

ダイレクトリンク vs IFC

OPEN BIMは非常に成功しているように感じます。一企業が、BIMに必要なソフトウェアをすべて提供するのではなく、複数の企業のBIMソフトウェアが連携するというコンセプトは、私たちがOPEN BIMに参画した2010年当時、奇妙なアイデアのようでもありました。揶揄されたり、よくても「いいアイデアですね、でもうまくいかないでしょう…」などと言われるくらいでした。

しかしそれも5年前のことです。それ以来、私たちはOPEN BIMがただのマーケティングスローガン以上のものであることを証明してきたと信じています。今では、「一企業でBIMが要求するすべてのソリューションを提供する」という考え方は以前に比べて影をひそめ、最大手の企業でさえ、BIMは一企業がまかなうには規模が大きく、重大すぎるものであると理解してきています。このため、buildingSMARTのビジョンや、IFCフォーマットの継続的な進化が不可欠でした。これこそがOPEN BIMの根幹であり、これなくしてはただの良いスローガンに過ぎなかったでしょう。

このことを私は嬉しく思います。素晴らしいことです。 しかし、最近「ダイレクトリンク」というものが、取り沙汰されています。

この「ダイレクトリンク」が時代に逆行しているということを理解していただくためには、IFCとダイレクトリンクという用語にあまりなじみがない方のために少し詳しく説明する必要があるでしょう。BIMソフトウェアはデータを格納するために、それぞれが異なる「言語」を持っています。もしあるソフトウェアから別のソフトウェアへデータを転送する場合には、データのフォーマットを変換する必要があります。これは英語から日本語、もしくはハンガリー語に翻訳するようなものです。この翻訳のためには特別なコードを書く必要があります。ここでは「翻訳コード」と呼ぶことにしましょう。例として、ソフトウェア「A」から、ソフトウェア「B」にデータを転送するプロセスは次の図のようになります。


もし、ソフトウェア「C」にデータを転送する場合は、別の翻訳コード、ソフトウェア「D」に転送するときもまた別の翻訳コードを書く必要があります。次の図のようなイメージです。



毎回一から翻訳コードを書き直さなければならず、またどちらかのソフトウェアがアップデートされれば、そのたびに書き直す必要があります。これはちょっとうんざりする仕事です…。そこでIFCですが、これはエスペラント語のようなアイデアで、誰もが理解することのできる普遍的な言語なのです。もしIFCを読み書きできれば、他のソフトウェアとの翻訳について気にする必要がなくなり、IFCだけに集中するだけでよいのです。例として次の図をご覧ください。


実際にはもう少し複雑で、それぞれのデータ出力処理に伴う作業もありますが、それは些細なものです。しかも作業の大部分は同じことなのです(重要!)。例えば次の図のようになります。



以前のやり方と比べてみると違いは顕著です。出力しなければいけないデータがたくさんある場合、ダイレクトリンクの代わりにIFCを使用することで作業量を大幅に削減することができます(どれだけ開発に力を注いだかにも比例しますが)。




これを理解すると、どちらがより新しい方法かは言うまでもありませんし、OPEN BIMの精神にも合っています。ではなぜ古い方法にもどりたいという人がいるのでしょうか?なぜならそこには罠があるからです。もしたった一つだけのコネクションを開発するのであれば、ダイレクトリンクを使用してより少ない作業量で間に合わせることはできます。IFCコネクションの開発には比較的大きな労力が必要となりますから。




ですので、大企業がOPEN BIMに関心がなく、特定のソフトウェアのデータ接続を行いたいだけであれば、リソースの少ない中小企業に対してIFCではなくダイレクトリンクで行うよう勧めるのも論理的です。ダイレクトリンクに投資した中小企業は、すぐにIFCへの関心をなくすでしょう。ダイレクトリンクの開発に投資したとしても、他のソフトウェアのデータ接続には利用できないからです。しかしこれは重要なポイントです。他のソフトウェアとの接続ができなくなり、特定のソフトウェアでのネットワークができれば、競合を排除し、ユーザーの選択肢はなくなります…。これが私たちの望む日本のBIM業界の未来の姿でしょうか?私はそうは思いません。

ダイレクトリンクを支持する人たちの主張には次のようなものもあります。おそらく耳にしたことがあると思いますが、「IFCが機能しない」というものです。繰り返しますが、これは事実ではありません。IFCは機能しており、年々よくなっています。構造設計の分野を別にすれば(この分野では実際に使用する前に現場に合わせた調整が必要となります)、IFC接続の品質というのは他に引けを取りません。もちろんデータのやり取りをする両者が必要な作業を行うことが前提です。もちろん、時には問題や、バグなどが出てきますが、それはダイレクトリンク接続でも起こり得ることです。問題は、バグにどのような傾向があり、いかに速く解決することができるかなのです。IFCのバグは以前に比べるとはるかに少なくなり、課題の多くは迅速に解決されています。少なくとも真のOPEN BIMの理想を信じている企業によって。

IFCにおいて、「解決できない」とされ、「ダイレクトリンク」の正当化のために、利用されてきた問題をより深く調査してみると、それは適切なIFCの出力で解決できるということが判明しました。例をあげましょう。下記の図を見ると、あるジオメトリがARCHICADと、よく知られたMEP BIMソフトウェアの間ではIFCを通じて完璧に動作しています。一方で別のBIMソフトウェアから出力されたデータとの間ではうまく動作せず、上記の2つのソフトウェア間で動作しているという事実は、IFCのバグではないということが誰の目にも明らかです。完璧なデータ転送には両方のソフトウェアのIFCアドオンが正しく動作する必要があります。この例で動作しないという問題の原因は別のBIMソフトウェアにあるようですね。

左がARCHICADから、人気のMEP BIMソフトウェアへのIFCデータの出力結果、右が別のBIMソフトウェアからのIFCデータの出力結果です。データは壁にいくつかの穴が開いているシンプルなものです。右の例は、本来であれば左の例と同じになるべきなのですが、結果を見るとジオメトリが壊れているのが明らかです。

全体としてみれば、IFCはほとんどのBIMデータ交換を処理するのに十分成熟していると言えます。私からするとダイレクトリンクを使用するというのは、IFCの入出力を高品質でできない(もしくはしたくない?)ことを上手に言い換えているように思えます。BIMソフトウェアのデータ接続の方法を以前の方法に戻すことに、お客様が関心があるとは思えません。そうではなく、私たちはIFCでの接続の調整をしていくことで、真にオープンな基準や公正な競争を確保していけるよう努力しなければならないと考えています。