2012年12月21日金曜日

失って気づく大切さ

私たち人間は、なくなって初めて気づくことがあります。お腹が空けば食べ物の有難みを感じ、家から離れればホームシックになり、失って初めてその大切さに気づきます。BIMもまた、例外ではありません。

最近、あるBIMマネージャーの方から興味深い話を聞きました。彼のチームでは新しいBIMプロセスに様々な問題を抱えていました。初めてのBIMプロジェクトではほとんど全てに不満がありました。従来の2Dシステムと異なるショートカットキー、モデリング機能の制限、不正確な包絡によって発生する余剰作業、そして3Dプロセスのスピードが予想より遥かに遅かったことなど。それでもなお、プロジェクトは進み、最終的には成功する形となり、次のプロジェクトが開始されることとなりました。

次のプロジェクトでは前回より円滑に進みましたが、プロジェクトのある時点で、主要メンバーの数人がチームを離れることとなり、2Dに戻らざるを得ない状況になりました。そして、その時のメンバーの数名は安堵の息をつきました。「ようやく苦しい作業が終わった!これですぐにプロジェクトが完成できる...」と思いましたが、実際に慣れ親しんだ2Dプロセスに帰ってくると、思った以上に面倒なものであることに気づきました。長く忘れていた様々な問題に改めて気づきます。平面図と断面図の整合性の問題が再び顕在化し、品質には明らかな問題がありました。建具表は手動で作成しなくてはならず、そして、あらゆる設計変更の度に全ての図面を更新しなくてはなりません。なんて面倒なのでしょう。そしてもちろん3Dではないため、コミュニケーションも円滑にはなりません。クライアント、エンジニア、役所ですら2Dの図面だけではイメージの共有ができません。この時初めて、BIMプロセスが完璧でないにしても、2Dよりは既に明らかに優れていることに気づきました。

もちろん、私たちGRAPHISOFTにとってこの話の教訓は「結果的に問題なく進んでいるから安心」ではなく、「なぜ、あるユーザーにとってはBIMに切り替えるのがそれ程難しいのか」という課題の解決です。「変化はどんなものであれ、難しい」と片付けてしまうわけにはいきません。3Dへの移行を誰でもスムーズに、より簡単に行えるように必死に取り組まなくてはならないことを認識しています。そして、今年はお客様から数多くの要望を伺い、ハンガリーの開発チームと調整をして参りました。この様に日本の要望を取り入れたBIMツールとして、常に進化したArchiCADをご提供してまいります。来年もお楽しみにして頂ければと思います。

忙しい年末ですが、体に気をつけてお過ごしください。
Merry Christmas and a Happy New Year!