約10年前、BIMの概念が日本で急速に普及し始めた当初は、BIMの導入によって、建設産業における困難が、努力を必要とせずに解決されるようになるという淡い期待がありました。現在では、この「無垢」な段階は過去のものとなり、BIMのように既存の価値観を打ち砕く「破壊的技術」が最初にもたらすものは、混乱だとわかってきました。BIMは、コンピュータや2D CADシステムのように、それまで行っていた作業をテクノロジーによって高速化する技術とは違い、ワークフロー自体にはるかに大きな変化を与えます。従って、BIMは新しいワークフローを必要とし、この変化は組織にとってしばしば苦痛をともなうものになります。役割と責任の再編を意味する場合は特にそうです。これが当初想定されていたよりも、BIMの導入ペースが長期化するように思われる理由です。
一方で、これらの大きな変化を乗り越えることができた企業は、すでに優れたサービスを提供し、より高い収益性を達成することで、利益を享受し競争の優位を獲得しています。BIMの導入に成功した企業は、次のようないくつかの共通点があるようです。
- 「BIMはソフトウェアではなくプロセスである」というマントラを深く理解しており、新たなワークフローを開発し、OPEN BIMコンセプトを完全に受け入れることに積極的である。
- (一部上の項目と重なりますが)OPEN BIMのコンセプトを完全に取り入れて、BIMが単一製品でのプロセスではないと理解している。
- "混乱期"を切り抜ける強いリーダシップをもっており、社内で一時的に不評を買う、あるいは一部のグループと利益が反する決定をすることを恐れない。
当社においては、私たちの仕事は単にBIMソフトウェアを販売するだけではないと常に信じてきました。成功するためには「ナレッジベンダー」になり、お客様が独自のノウハウを作成することをお手伝いする必要があります。私は、これが今後10年間、日本におけるBIMの発展を導き続ける哲学であると確信しています。
* 1995年にClayton M. Christensen(有名な「Innovator's Dilemma」の著者)が作成した言葉。「破壊的革新」とも呼ばれる。