ある建築家はBIMに胸が弾み、ソフトを購入しました。オフィスが数週間で革新的になると信じてトレーニングに参加し、パイロットプロジェクトを開始し、3Dから全てを提供できるようすることを願っていました。しかし、締め切りが近づくとリスクを感じ、ある一定の段階で慣れ親しんだ2D CADシステムに切り替えます。次こそは、と考え練習を続けますが...
しかし1年後、彼のBIMソフトウェアの利用はプレゼンテーション時に使用するためのモデリングのみでした。図面は未だに以前のように2Dで作成され、スマートな解析や自動積算などを使用する様子は見られませんでした。彼は結局のところBIMは大げさに騒がれているだけだと感じました。「BIMはまだまだだよ!」と知り合いにこっそり話していました。
こんな話を聞いたことがありませんか?
私はあります。そして、この問題は私たちの競合他社だけでなく、弊社に対しての問題でもあると認めざるを得ません。(しかしArchiCADユーザーは比較的少ないと信じています)しかし、これは本当でしょうか?BIMは実用的な利用には時期尚早でしょうか?私の短い答えはノーです。しかし、 なぜそのように考える結果となったのか、より深く考える必要があります。また、いくつかBIMの成功した事例が存在している一方で、なぜ未だにそれほど多くの失敗が起こりうるのでしょうか?
まずは勇気を出して飛び込めているかどうかです。ハンガリーでは「足が届く浅瀬では歩くことに頼ってしまい、泳げるようにならない」と言います。
同様にいつまでも2Dシステムに頼っていては未知のソフトで試行錯誤することを簡単に諦めてしまい、2Dに戻り、図面を仕上げて早く家に帰ってしまいます。これでは新しい技術を身につけることはできません。深い水に飛び込んで泳がなくてはなりません。AIDEA社の話を思い出してください。たった3ヶ月で2Dを完全に削除したのです。その当時BIMは現在よりも格段に未熟でしたが、非常にタフな数週間後にはBIMシステムに自信を持ち、2度と元に戻ることをしませんでした。
2つ目は、過剰な期待です。BIMは3Dで素晴らしいプレゼン資料を作れるでしょうか? それは確実でしょう。モデルから完璧な設計図書を作成することは? もちろんです。モデルから正確な積算を作成することは? それももちろんです。日影計算、環境解析やファシリティマネージメントは? これらは全て実際に日本および世界中で活用されています。しかし、「これら全てが同じモデルでできますか?」また、特に「2、3ヶ月のトレーニングでできますか?」というように聞かれれば答えはノーです。
しかし、設計図書の整合性だけでも非常に革新的なことです。私のアドバイスは、焦らず目標を設定し、一つずつ確実に、ということです。そして結果を楽しみましょう。
(以前の投稿 ArchiCADの正しい使い方? 参照)
3つ目はBIMのノウハウの取得の難しさです。現状では比較的小規模の企業より大規模の企業(ゼネコンや組織設計事務所)がBIMの実施を成功させている例が多く見られるでしょう。これは組織の規模が大きければ、失敗は許されないということも理由の一つだと思いますが、それ以上に、BIMを成功させるためにはBIMのワークフローを確立し、BIMのノウハウを構築することが重要だという点です。大規模なゼネコンや組織設計事務所はBIMの推進グループを立ち上げ、ノウハウを作ることができます。しかし小規模の企業にはこれを行うリソースがありません。それを実行するには週に数時間余分な時間が必要かもしれません。この点に関してBIMのメーカーは胸が詰まる思いです。私たちはユーザーの皆さんにもっとノウハウを提供すべきです。ありがたいことに、このノウハウはお客様によって作られたもので既に存在しているので、一から作り上げるのではなく、この知識を収集し、組み合わせ、わかりやすい形にドキュメント化する必要があります。
これを私たちが2012年、次に取り組まなくてはならないタスクとして私のチームに伝えました。これを「ArchiCAD BIMテンプレート」と呼んでいます。十分に準備されたBIMデータセットでリアルな3Dモデルを機能させることを可能にしたいと思います。これは現在進行中のプロジェクトで、また、BIMの技術が急速に発展している為、継続的に取り組まなくてはなりません。しかし、来年の春頃には第一段階の形として、BIMへの移行の難点を緩和するものをお見せできると思います。
お客様、パートナーの皆様、このブログを読んで頂いている皆様が素敵なクリスマス、新年を過ごされるよう、心よりお祈りしております。
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