今年の夏はとても忙しいです。弊社では、毎年9月がアップデートサイクルのクライマックスであり、新バージョンのリリースや新製品発表会などのイベントなどの準備が重なり、7,8月から非常に忙しい時期が続きます。しかし、今年はそれに加え、大幅に人手が取られる大きなプロジェクトが動いています。このプロジェクトを「ERPの導入」と呼んでいます。
ご存知ない方の為に:ERPは、 "エンタープライズ・リソース・プランニング"の略で、受発注、出荷、財務管理などの全ての基本的なビジネスプロセスを一つのシステムに統合します。新しいシステムを使用することにより、一回の簡単な操作で本社からソフトウェアの発注が可能になり、発注書や請求書の作成、売り上げ報告、ユーザーDBのアップデートなど、データが常に最新の状態となります。
聞き覚えがないでしょうか?私たちにはあります。複数の関連するデータベースを古い方法で、相互に連結されていない数十ものExcelファイルなどで管理するということです。頻繁に、同じデータを2回以上入力する必要があり、別々の計算から数字を持ってこなくてはならなかったり、変更があるとプロセス全体をやり直さなくてはなりませんでした。ここで、業務処理データを建築/建設データに、Excelシートを2D図面に置き換えてみると、驚くほど共通点があります。設計者は面倒な入力処理があり、結果の不整合や変更に柔軟に対応していかなくてはなりません。これに対し、ERPシステムは、「業務管理のBIM」のようなものです。一元化されたデータベースがあり、全ての入力は一度だけで、接続されている全てのデータが自動的に更新します。まさにBIMの原則と同じです。
シンプルでロジカルに思えますが、そう簡単ではありません。まずはシステムを購入する必要があり、これは当然安くはありません。実際に、BIMシステムよりも高価です。しかし、ソフトウェアのコストはトータルコストのほんの一部であり、セットアップとトレーニングを提供するシステムインテグレータ会社に多くのコストを支払わなくてはなりません。もちろん、これは本社のGRAPHISOFT(実際には:Nemetschek社グループ全体)が関わっており、要件の調整や、データ交換のテスト、使用する上でのアドバイスなど、私たちへのサポートにかなりの時間を費やしています。しかし、社内で発生する最大のコストは、今後のシステムを使う人が新しいプロセスを習得するために費やす時間です。Excelは誰でも使えますが、新しいシステムの場合、当然ゼロから学習する必要があります。それだけではありません。現状のあらゆるプロセスを見直し、新しいERPシステムに適用させるかどうか一つずつ検証しなければなりません。以前と同じようなプロセスで行うことができるものもありますが、多くの場合、プロセスを大幅に変更する必要があり、場合によっては制限が厳しくなり、柔軟性が低くなることもあります。
このような背景がありつつも、「開始日」は迫っており(10月1日に予定)、この時点で全てが以前より良くなるわけではありません。新しいシステムは柔軟性が低くなり、以前のように臨機応変に発注を行うことはできなくなります。私はこの発注プロセスが以前より大幅に速くなるとも思えません。新製品や販売方法は、さらにお金のかかるカスタマイズのプロセスを必要とし、トレーニングは一時的なものではありません。新しい社員はトレーニングが必要となり、システムが更新されたら既存のユーザーもそれに合わせてトレーニングが必要になるかもしれません。
では、なぜこれを行う必要があるのでしょうか?このような様々な側面があるにも関わらず、多額のコストを支払い、 現在のシステムを新しいシステムに変える必要があるのでしょうか?それは、これらのマイナス面を考慮しても、ERPシステムの利点が非常に大きいということです。
最もわかりやすい利点はデータの整合性と数字の一貫性が確保されるという点です。まさにBIMと同じように、一般的なデータベースを使うだけでは別々のレポートに異なるデータを持つことは不可能です。これだけでも、作業量を大幅に減らすことが可能になり、導入コストの高さを正当化することができます。しかし、さらに重要なのは、いつでもあらゆるデータにアクセスすることが可能になり、実質的に会社のあらゆる側面においてレポートを即座に作成することができる、ということです。これにより経営陣は、古い「2D」システムの時より賢く、恐らくより良い意思決定を行うことができるでしょう。ビジネスプロセスをERPへ移行するための時間そのものも、全て無駄というわけではありません。以前のプロセスを見直すことで、多くの矛盾や無駄を発見することができました。全体的に、新しいソフトウェアが完全に使用されることになれば、この努力は確実に戻ってくると確信しています。そのためには、まず真剣に取り組まなくてはならず、これは痛みを伴います。社員がこのプロジェクトに多大な労力が必要であるということを実感した際、とても嬉しそうには見えませんでした。私が信じて話したことは、私たちがお客様に弊社のBIMソリューションの導入を提案するのであれば、せめて、それと似た社内プロセスを変える方法を導入し、「業務管理のBIM」を実感しなければなりません。お客様にとって必要となる労力に似たものを体験することは、私たちにとって貴重な経験です。
恐らく、私の言いたいことがおわかりでしょう。これらの労力はArchiCAD(または他のBIMシステム)を導入するときに必要になるものと、さほど変わりません。必ずしも苦痛となるわけではありません。(実際、BIMはすべてのプロセスに同時に適用する必要はありません)しかし、本質的には同じです。現状のプロセスを見直し、新しいシステムを学ぶ一方、ある程度の柔軟性を諦めることとなります。これは多大な労力を必要とし、それによって効率が初日から良くなるということはありません。実際、一般的にBIMを導入後、それ以前の効率性のレベルに戻るためには2~4ヶ月必要だと言われています。しかし、痛みと引き換えに多くの利益も得ることができます。ミスを排除し、アイデアをコミュニケーションする方法は大きく改善され、より素晴らしいデザインのコントロールが実現できます。より良いデザインはすぐにも実現できます。痛みを伴う価値があると思いませんか?
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