2012年11月16日金曜日

Key Client Conference, Day 2

2日目のカンファレンスの内容についてお伝えする前に、少し楽しい部分をお話しましょう。国際カンファレンスでは毎回、開催国の文化の一面に触れています。ハンガリー、ブダペストは様々な面がありますので、短い開催期間の中で何をお見せするかは、いつも悩ましい問題です。前回すでに、屋根テラスで行われたカンファレンスのオープニングパーティについてご紹介しました。2日目の夜は、ブダペストで最も美しい建物の一つ、ブダペスト民族博物館(旧最高裁判所)で「祝賀ディナー」が行われました。巨大な19世紀のホールで、有名なトカイ地方産のワインと共に素晴らしいディナーを堪能しました。さらには、有名なハンガリーの作曲家フランツ・リストの作品を奏でる生のピアノコンサートが行われ、皆が感嘆されていました。
民族博物館での祝賀ディナー 
2日目は市内のバスツアーもありました。定番のコースを回るのではなく(おそらく参加者のほとんどの方は個々に市内観光を終えていたでしょう)、このツアーは新旧の建築を巡るものでした。ブダペストには美しい建築が数多く存在します。ツアーの最後にバスはGRAPHISOFT Parkに到着し、ArchiCADのコードがまとめられている場所をご覧頂きました。また、スティーブ・ジョブズ氏と共に写真を撮る機会もありました(正確には彼の銅像と共に)。この銅像は、80年代初期のGRAPHISOFT創業期に極めて重要な影響を与えた人物である同氏を称え、死後直後に建てられたものです。
スティーブ・ジョブズとのツーショット
それでは、ここから本題です。2日目は、施工プロセスにおけるBIMについてでした。大林組の近藤氏によるプレゼンからスタートしました。非の打ちどころのない英語で進められ、同社の「スマートBIMコンストラクション」と呼ばれる取り組みをご紹介頂きました。近藤氏は、施工プロセスの各フェーズにおいて、BIMがどのような役割を果たすかを、非常に丁寧に実プロジェクトの例を用いながら説明されました。プレゼンの最後に、「スマートBIMクラウド構築」のアライアンスについて触れ、他企業の参加を受け入れるものであることを強調されました。

続くプレゼンターは、日本でも良く知られるフィリピンのAIDEA社のジョジョ・トレンティーノ氏です。AIDEA社は設計事務所であり、建設会社ではありませんが、 施工フェーズでも建築プロジェクトに緊密に協力しています。ジョジョ氏は簡単に「AIDEA社の歴史」を紹介し、フィリピンの中規模の設計事務所がBIMの技術を最大限に活かし、どのように現在のような収益性の高い、世界トップ100にランクインする建築設計事務所に成長したかを説明されました。AIDEA社は、現在すでに170名もの設計者を採用しており、「バーチャルデザインコンストラクション」としてIT技術の可能性を十分に活用し、インテグレーテッドプロジェクトデリバリー(IPD)と呼ばれるプラットフォームによって、施工プロセスにおける「運転席」を設計事務所のもとに取り戻すことができるということを表しました。
BIMによって劇的な効率化を遂げたAIDEA社の成長を表すスライド
3番目のプレゼンターは、こちらも見覚えのある方が多いでしょう、ポルトガルのMota-Engilからアントニオ・メイレイレス氏です。アントニオ氏のプレゼンテーションは、8月に行われたArchiCAD 16新製品発表会の時のプレゼンに近いもので、同社が採用するBIMの使用方法、それによって得られるメリットをご説明頂きました。このメリットについては、ただの概算ではなく、内部監査に基づく確かなデータで実証されているということでした。同社のBIMへの非常に意識的かつ実用的なアプローチには、今回も大変感銘を受けました。彼らは、実際にBIMモデリングのコストを認識しているため、メリットのある範囲のみモデルを作成しているのです。(以前の記事を参照
BIMの期待値に対するMota-Engil社の導入アイデア
続いて、イギリスのBond Brian Architectsからロブ・ジャクソン氏です。同社の紹介から、BIMによる成果をお話頂きました。また、イギリスにおけるBIMの状況や、イギリス政府の先4年間の計画による、BIMの建設業界への適用などについて詳しくご説明頂きました。イギリスでは、サスティナブルデザインとBIMデータのファシリティマネージメントへの利用に非常に重点が置かれているようでした。国によってBIMのアプローチ方法の違いを見るのは非常に興味深いものでしたが、どうもプレゼンターはイギリスのBIM標準の詳細を説明することに没頭しているようでした。今回のカンファレンスは限られた地域のトピックよりも、ワールドワイドのディスカッションであるべきだと感じましたが...

最後に、パネルディスカッションが再び行われました。2社の設計事務所と2社のゼネコンの代表者によって行われ、ディスカッションは主に、それぞれの会社における様々な要件やBIMを利用して両者の協力をどのように向上できるかなどを議論されました。このディスカッションで「最も良い発言をした」として架空の賞を授与するとすれば、アントニオ氏になるでしょう。「ヨーロッパの危機はMota-Engil社のBIMの取り組みにどのような影響を与えましたか?」という質問に対し、「Crisis is good, it makes you stronger!(危機は良いものです。それによって強くなるのです)」という驚きの答えでした。彼がここで意味したのは、物事が順調に進んでいる時には、変化に対して消極的ですが、問題がある時には、より賢くならなくてはならず、より限られたリソースあるいは薄利の状態で、より優れた結果となる方法を導入しなくてはならないということでした。「そしてまさに、BIMがそれをもたらしました」と付け加えました。これは私たち日本にとっても非常に貴重なアドバイスだと思います!
真剣に聞き入る多くのオーディエンス
ドナウ川でボートに乗らなければ、ブダペストの滞在を完全に満喫したとは言えないでしょう。美しい灯りに灯された街のクルージングという、とっておきのイベントを最後の夜に残しておきました。これは、誰もが一生のうちに少なくとも一度は経験するべきだと思います。
ドナウ川からの国会議事堂の夜景

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