穏やかな秋の夜、ブダペストの屋上テラスにて、カクテルと共にカンファレンスのオープニングパーティが始まりました。非常に素晴らしかったのは、テラスから「ArchiCAD 12 のビル」(
ArchiCAD 12 のパッケージに使用された建物)が見えたことです。ほろ酔いと興奮がありつつも、リラックスした雰囲気に包まれ、27カ国から125名ものゲストがお互いに古くからの友人のように会話を楽しんでいました。GRAPHISOFT主催のKCC(Key Client Conference)が再び開催されたのです。リーマン・ショック後、しばらく開催を見合わせていましたが、ようやくこのような盛大なパーティを開催できるようになりました。
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屋根テラスから見えるArchiCAD12の建物 |
翌日のカンファレンスでは、GRAPHISOFT本社のCEO、ビクター・バルコニの基調講演から始まりました。今回のプレゼンでは普段とは違い、業績の発表より今後の展望にフォーカスを当て、業界におけるエコシステムをどのように構築していくかを発表しました。彼が強調していたのは、GRAPHISOFTは限定された数少ない企業に対してニッチな製品を提供するのではなく、設計者から施工者、最終的にはクライアントまで、建築/建設プロセスに関わる全ての関係者に対して、BIMのメリットを提供することを目指しているということでした。
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カンファレンスの様子 |
次の講演者は、開発部門のトップであるラチ・ヴェルテシです。ラチは、彼特有の低めのトーンでプレゼンを始め、私たちが直面している様々な課題に対して話しました。BIMに対する恐怖、サスティナブルデザインの要件、多国籍企業におけるグローバルチームの要件、高まるBIMデータのクラウド利用のニーズ(設計者だけでなく、施工チーム、クライアント、役所の関係者がいつでもどこからでもBIMデータを利用できるようにすること)、そして最後に、増え続けるBIMデータの容量の問題について触れました。GRAPHISOFTは、これらの課題に対して、BIMモデル作成のさらなる簡易化、エネルギー評価機能の標準搭載、BIMサーバーのさらなる強化と改善、そしてOPEN BIMのBIMソフトウェア間のさらなる強化を図り、ソリューションを提供します。特に興味深かったのは、彼がArchiCADのパフォーマンスにおける優位性をどのように維持していくのかを説明したことでした。開発チームは、新しく開発された全てのコードに対し、常にパフォーマンスの変化をモニタリングしており、それらのコードが過去のものより高速であることを確認できるまで、開発を進めないとしています。彼のプレゼンは「
サグラダ•ファミリア」のビデオで終えました。初めて公開されたものだったので、壮大な拍手で幕を閉じることとなりました。
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パフォーマンス・メインテナンス・システムのスライド |
そして、おそらく最も期待されていたのが、続く製品デモです。次のバージョンがどうなるかを説明するだけではなく、開発チームで何が行われているか、今後数年のプロジェクトについて全てを話しました。この部分は厳重に秘密保持契約の下にあり、詳細は明らかにすることはできませんが、プレゼンテーションの後には多くの笑顔が見られ、鳴りやまない拍手が送られました。
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ランチブレイクで和やかに会話をするCEOのビクター・バルコニ |
ランチの後は、設計事務所のユーザーによるプレゼンテーションが始まりました。最初のプレゼンターは、オーストラリア最大級の建築設計事務所、
Rice Dubneyのトップであるダレン・ティムズ氏です。ダレン氏は、同社におけるArchiCADとの15年以上にわたる歴史を説明されましたが、実際は2006年まで、BIMツールとして最大限に能力を発揮するようには使用していなかったということを説明しました。しかし、一度「BIMの旅」が始まったら、後戻りすることはなく、 「BIMの夜明け」の時代には、劇的に効率化した、と述べました。そして、オーストラリアで初めてBIMと資産管理ソフトウェアを使用して竣工/引き渡しされた高層ビル、シドニーの「ARKプロジェクト」について語りました。また、クイーンズランドに位置する、非常に素晴らしく調整された巨大な病院など、最新のプロジェクトを披露されました。
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Rice Dubneyの「BIMの旅」 スライド |
次のプレゼンターは、ArchiCAD 16に使用された美しい図書館の設計を行った設計事務所、
Helen and Hardからダグ・ストラス氏です。ダグ氏のプレゼンテーションは、BIMに関してというよりは、デザインにフォーカスをしたものでしたが、素晴らしいノルウェーの風景に見事に調和した、美しい木造建築の数々を見せて頂きました。もちろん、「ArchiCAD 16の図書館」の様々な写真も見せて頂きました。
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ノルウェーの森のロッジby Helen and Hard |
続くプレゼンターは、アメリカ西海岸に位置する、
Quattrocchi Kwok Architects (QKA)からアーロン・ジョブソン氏です。QKAは中規模の設計事務所(約50名の設計者)であり、ほぼ完全に、高校や大規模な大学キャンパスなどの教育施設に特化しています。BIMソフトウェアとしてArchiCADを選び(完全にMacを使用している会社であるため、必然的ですが)、使用しています。2005年より、企画から施工の調整まで、全ての設計をBIMで実施しています。実際、彼らのプロジェクトの範囲は非常に拡大しており、インドに業務の一部を外注するようになっています。また、大変興味深かったのは、レンダリングはQKAのBIMデータを使用して、品質の高いプレゼンテーションを短期間で仕上げることのできる外注先に任せることにしているため、設計者は完全にデザインに集中できるということです。そして、それが彼らにとってはBIMデータを作成することとイコールであるということです。QKAはまた、サスティナブルデザインにも重点を置いており、アーロン氏は、これはBIMでなければ不可能だろうと述べていました。
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ドナウ川が見える穏やかなテラスでコーヒーブレイク |
最後のプレゼンターは
日建設計の山梨氏です。皆さんの多くは、すでに彼のプレゼンテーションをご覧頂いたことがあるかと思います。BIMの利用におけるメッセージは力強く、参加者は、「ソニーシティ大崎」の環境に配慮されたファサードデザインなど、日建設計のクリエイティブで新しいBIMの使い方に大変感銘を受けていました。
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パネル・ディスカッション |
その後、発表者によるパネルディスカッションが行われました。「BIMの役割」に論点が置かれ、BIMとはツールであるか、設計を変えるものなのか、等議論が行われました。この議論の結論は、セッションの最後に山梨氏がまとめました。「BIM is not just a tool, but a new way of thinking about architecture(BIMとはただのツールではなく、建築における新しい考え方である)」この言葉には、多くの参加者が感銘を受け、1日目のカンファレンスの素晴らしい締めくくりとなりました。そして、この時間にはホテルからドナウ川の美しい日没を見ることができました...
次回は、このイベントの2日目を書きたいと思います。
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ドナウ川のマジカル・サンセット |
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