2013年8月2日金曜日

BIMは細部に宿る

グラフィソフトジャパンにとって、夏はいつも忙しい季節です。通常、秋口に来るArchiCADの新バージョンリリースの準備のためです。次のリリースであるArchiCAD 17では、日本にとって非常に重要であるため、今回は特に忙しい夏を過ごしています。新しいバージョンがどのようなものであるか、楽しみにされていると思いますが、その前に少し、過去数年のテーマを振り返りたいと思います。

グラフィソフト、ArchiCADは毎年、単にいくつもの新機能を追加してリリースするだけではなく、戦略的に特定のテーマを掲げ、包括的なコンセプトとしていることはご存じかと思います。この方法によって、開発のプログラミングもより効率的になります。また、インターフェースやワークフローを絶えず変化させてしまうことは、ユーザーの皆さんに非常にストレスを与えてしまうことにもなり得ます。それでは、ここ数年の開発テーマの概要をご紹介します。

ArchiCAD 13から始めましょう。というのも、この年(2009年)が、私が日本に戻ってきた年であり、ArchiCADの製品開発に再度関わり始めた年なのです。ArchiCAD 13は「チームワーク」のバージョンとしても知られています。最も重要な機能は生まれ変わったチームワークの機能であり、まさに革新的と言うにふさわしいものでした。このバージョンがまさに、「チームワーク」の機能が必須となる大規模組織に向けた、可能性の扉を開いたものでした(当時、日本ではArchiCADは比較的小規模の設計事務所で主に使われていました)。

2010年では、ArchiCAD 14で再び「コラボレーション」にフォーカスしました。しかし、ここではより広い意味で様々な分野との連携を目指しました。結果的に、IFCのインプット、アウトプットはより強力になり、「OPEN BIM」のムーブメントが生まれ、このコンセプトは広くにわたって受け入れられるようになりました。



ArchiCAD 15と16のテーマは、どちらも3Dモデリングにフォーカスしたものとして、少し似ています。モルフツールの導入により、建築家の設計における自由な発想がBIMによって阻害されるという懸念を一掃しました。



振り返っても、非常に素晴らしいリストで、ブダペストの開発者たちも優れた仕事をしたと思います。しかし、一つ重要なエリアが欠けているのです。それは2D図面の生成についてです。これについては、大きな改善はArchiCAD 12以降ありませんでした。グラフィソフトは2D図面の生成を包括的にターゲットとしています。これが今のところ、BIMデータの最も重要なアウトプットです。また、モデルから自動的に切り出したドキュメントが基本設計レベルでは通用するとしても、実施設計や、特に施工図には十分だと言えないということが、多くの人がBIMはまだ発展途上だと言う理由です。

ある人たちからは、これを実現するのはあまりに困難であり、このレベルに挑戦するのではなく、2Dソフトの領域として残しておく方が賢明だと助言されたりもしました。しかし、ドナウ川の頑固な同僚たちは、そう簡単にあきらめる連中ではありません。ArchiCAD 17では非常に画期的な技術を実現しました。新しい優先度ベースの接続により、平面図と断面図のどちらでも、自動的に完璧な納まりを実現します。

ドイツの有名なモダン建築家ミース・ファン・デル・ローエは、かつて「God lives in the details -神は細部に宿る-」と言いました。建物はあらゆる細部まで正確で美しくなければならないという意味です。これはBIMデータにも同じことが言えます。細部の納まりまで正しく入力されなければ、全体のデータとして完全なものにはならないということです。この考えから、新しいArchiCAD 17ではこの言葉に敬意を表し、スローガンとして「BIM lives in the details - BIMは細部に宿る-」としました。

ArchiCAD 17ではドキュメントワークフローにおいて、徹底的な改善がなされました。新しいワークフローによって、この先10年は、今年の2013年が、ついにBIMデータからの実施設計図・施工図の生成が現実となった年として記憶されることとなるのではないかと思います。来週は、どのようにこのバージョンが実現されたかについて書きたいと思います。

0 件のコメント:

コメントを投稿

注: コメントを投稿できるのは、このブログのメンバーだけです。