2010年2月15日月曜日

天秤の日陰

私が初めて日本に来たのは平成の初期でしたが、最初に気づいたのは建物に傾斜壁が多用されていたことです。当初は日本における建築の流行だと思いましたが、通っていた大学の教授によると、日本の日影規制が厳しいためである事が分かりました。建設業者が建築面積を最大限活用しようと試行錯誤した結果と言うわけです。

再び、グラフィソフト社に勤務するようになり、このような複雑な処理を行える建築用ソフトがいくつかあることを知りました。しかし気になったのは、そのソフトにもう一度モデルを入力しないと計算ができないという点でした。これは二度手間です。すでにBIMモデルを作成しているのであれば、そのデータを利用して計算を行いたいところです。そこで最初の段階として、日本で知名度の高い生活産業研究所株式会社の「ADS」という日影計算ソフトとArchiCADのデータ連携を実現しました。これにより、ArchiCADBIMモデルをCW2形式(ADS形式)に変換して、再入力することなく日影分析が行えます。

しかし、BIMの真価は受動的にモデルの確認を行う事だけではなく(モデルを初めから作り直さなくて良いのはもとより)、自由に設計検討しつつ法的側面も継続的に管理できることにあります。そのためにはBIMモデルで直接行える確認/検討機能、つまり弊社の場合ArchiCAD上のアドオンが必要です。これを達成するには生活産業研究所と密接に開発を行うことが不可欠でした。先日、二社の業務提携が正式に発表されましたが、以前から共同開発を行っていましたので、同時に最初の製品を発表しました。「Shadow Planner」というアドオンで、日影計算の重要な部分をArchiCAD上で実行できます。さらに、生活産業研究所の好意により、このアプリケーションはArchiCADユーザーに(もちろんSoloユーザーにも)無償で提供されます*

しかしこれで終わる事はありません。弊社の目標は全ての日影計算を、そしてさらに大きな発想としては、全ての法規確認をArchiCADBIMモデルで自由に行えるようにすることです。これもまた、BIMの理想と言えます。BIMモデルを一度作成すれば他の必要な作業が自動的に行われます。このような機能が増えてくれば、「BIM天秤」の右側がさらに重くなることになります。


* 現在、Windows版のみ入手可能

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