ArchiCAD BIMガイドラインの第二部がスタートします。基本設計をターゲットとした第一部を先月にリリースし、今回は実施設計編を作成しました。これまでにユーザーの皆様から受け取ったフィードバックは非常に肯定的であり、改めてBIMのノウハウをまとめ、広げるというプロジェクトを継続していくことを決意しました。
しかし、BIMガイドラインについて多くの方々から同じ質問を頂きました。それは、「なぜドア、窓、カーテンウォール等のBIMオブジェクトがテンプレートに入っていないのか」ということでした。1つの回答は非常に単純なものです。ArchiCADは1,300以上のパラメトリックオブジェクトがデフォルトで用意されており、また、VIPservice会員用には、ダウンロードが可能な多くのオブジェクトを提供しております。しかし、もっと根本的な、いくつかあるBIMソフトとの成り立ちの違いを説明する必要があります。それは、いくつかのBIMソフトは元々機械製品の設計向けに開発されたものであり、ArchiCADは建築設計用にゼロから開発されたものだからです。この重要性を理解し、機械と建築この2つの異なる設計プロセスを考える必要があります。
機械設計の大半は大量生産のためのものであり、ほとんどのコンポーネントが標準化されている場合にのみ有効です。エンジニアは、まずコンポーネントを集める(または必要に応じて設計する)ことから始めなくてはなりません。そのプロセスを踏まなければ大きいユニットを組み立てることはできません。CADに関して言えば、最初に「マスタデータ」を作成しなければ設計を開始できない、ということを意味します。これは「ボトムアップ」プロセスと呼ばれるものです。このコンポーネント、オブジェクトを設定するのは面倒な作業ですが、機械工学の元々の流れに反しているわけではなく、さほど大きな問題ではありません。
建築も大量生産に向かう兆しはありますが、間違いなく、車や船などのレベルに達することはありません。クライアントの広く異なる要件や、様々な現場はそれぞれの特異性を有するため、設計者は固有の製品を作らなくてはなりません。メーカーによるコンポーネントの利用は広がる一方、建物の最も重要な部分、壁、屋根、構造などの骨組は依然としてカスタム設計されることとなります。そして、この骨組みが他の要素を決定するため、設計は当然ここから開始する必要があります。これは、まず意思決定のスタートが「建物の全体的なデザイン」からなされる明らかな「トップダウン」プロセスであり、その後、少しずつ詳細に落とし込まれていきます。その結果、プロセスが使用可能なコンポーネントによる制約を回避し、設計者はより自由を担うことができます。
BIMソフトが機械設計に起因している場合、「ボトムアップ」プロセスを促進する傾向があることは当然だと思います。この場合、設計作業を開始するときは事前に部品が整理され、並べられているということが必須となります。ただし、問題は、この時点で設計者はどの部品を使うべきなのか、確定していないことです。もし、設計者がBIMソフトを直接使わず、オペレーターに指示する立場であれば、問題は比較的小さいかもしれません。しかし、そもそもBIMはオペレーターにではなく、設計者に使われるべきであり、これは設計者だけがコントロールできるものだと思います。
ユーザーの皆様からはよく、ArchiCADは競合するBIMソフトより簡単に使える、と仰って頂けます。(私自身、これを誇りに思っています) その理由は、作業に取り掛かる前に面倒な部品作製などのセットアップ・プロセスを強いられることなく、直接デザインの作業を楽しむことができるからであると思います。ArchiCADは、最初から建築設計プロセスが「トップダウン」であるという事実を踏まえて開発されたうえ、これが、設計者の望むものをコントロールする唯一の方法なのです。その結果、ArchiCADでは最初からテンプレートの一部として多数のBIMコンポーネントライブラリを持つ必要はなく、後から必要に応じて、自由にGDLライブラリの変更や追加、ツールでカスタムオブジェクトを作成することができます。また、レーヤー設定など、さまざまな環境設定や属性についても同様です。
ArchiCADは「建築家のために建築家によってデザインされた」製品です(以前の製品スローガンとして使われた言葉のひとつ"Designed by Architects for Architects")。 これで少し理由をおわかり頂けるとよいのですが...
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