先日シンガポールに行った時、私は他のBIMソフトからARCHICADに乗り換えようとしている大手のデザイン事務所に対してのプレゼンテーションに参加していました。幹部の一人(実はトップの方でした)は、ほぼずっと静かに座っていらしたのですが、最後に一つ興味深い発言をされました。「我々が●●●からARCHICADに乗り換えようとしている最大の理由は、GRAPHISOFTから受けられる上質なサポートにあるのです。」機能、性能、操作性、連携など私たちが普段アピールしている点には全く触れず、サポートのこと「だけ」を話したのです。
その時から私は「一体GRAPHISOFTのビジネスとは何なのだろう?」と考え続けています。私たちは何を売っているのか? すぐに「BIMソフトウェア」と言う答えは出るものの、それだけではない…実は私たちは「新しい仕事のやり方」を提供しているのではないか、そしてARCHICADはその新しいワークフローの一部に過ぎないのではないか、との思いが段々と強くなってきました。もちろん、ソフトそのものは関係ないと言っている訳ではありません。優れた性能と操作性を持ったOPEN BIMソフトであることは必須条件であり、その部分はブダペスト本社で働く我々の同僚が担ってくれています。大事なのは、ARCHICADをベースにした新しいワークフローを用いることによって、顧客の仕事を効率化し業績を上げることが出来るのかと言うことです。そうでなければARCHICADは「豪華な夕食のために山海の珍味を集めたのですが、レシピがないので調理できません。それでは!」そんな風に例えられてしまうかもしれません。
マニュアルを読めばモデリングツールの使い方やレイヤーセットの作り方、IFCファイルの保存方法などはすぐに理解できます。でも、それだけでは十分ではないのです。そもそも何をモデリングする(しない)べきなのか、どんな種類のレイヤーセットを作るべきか、どのように確認申請の図面を作成するのか、ARCHICADと普段使っているMEPアプリをIFCでどのように接続するのか、なども知っておかなければなりません。このような高度な知識(いわゆる「ノウハウ」)が前述の「調理のためのレシピ」となって、本当の意味でARCHICADのパワーを活用することが可能になり、ひいては仕事のやり方までを変えていきます。
しかしながら、もし私たちがこの「ノウハウ」をユーザーが作ってくれる物だと期待していたら、ベンダーとしてきちんと仕事をしているとはいえないでしょう。これが、グラフィソフトジャパンで最大の部署は営業ではなくBIMインプリメンテーショングループ (BIMi) であると言う理由です。BIMiの社員は、ソフトウェアそのものに勝るとも劣らないほど重要なこの「ノウハウ」を培い、継続的に進化させていく業務を担当しています。具体的には、ユーザー自身でARCHICADが使えるようになるよう手取り足取り教える「JUMP!」トレーニングや、「How to use ARCHICAD」ブログ、GRAPHISOFTヘルプセンター、そしてもちろん莫大な時間のユーザーサポートなどで実現しています。 また、GRAPHISOFT Registered Consultants (GRC) の方々が本を書いたりトレーニングを開催したりすることによって、効率化の解決策を模索しているユーザーの手助けをしていることも忘れてはなりません。
ソフトウェアとノウハウ、両方の要素が揃わない限り、将来性はあるが違和感のある良く知らない物のために、以前から使い慣れた2Dワークフローを捨てることは出来ないと思います。ノウハウを年々積み重ねていくことは、ソフトを改良していくことそのものより、とても重要なことです。私たちグラフィソフトジャパンでは、新しいテクノロジーには飛びつかず世の中の主流になってから取り込むタイプの方々にもARCHICAD 20でBIMをスムーズに導入していただけるよう、さまざまな取り組みをしてきました。ARCHICAD 20は年齢が20歳になっただけではなく、内容とノウハウでも成熟期を迎えました。―いよいよ「成人」になる準備が出来た訳です!
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